このところ、人が住まなくなり、放置された「空き家」が社会問題になっているのをご存知でしょうか。
空き家は住居用の住宅を指しますが、実は住居用以外の空き店舗や空きビル、空き地(遊休地)などの「遊休不動産」もまた、同じように問題視されています。
商店街などでも、テナントが入らないビルや、廃業してシャッターが下りた店舗が目立つ「シャッター街」などを見かけた経験があるかもしれませんね。
今回は、空き家と「遊休不動産」の違いや、それらが内包している社会問題などについてお話していきます。
空き家と「遊休不動産」の違い
先ほども少し触れましたが、「空き家とは使われていない住居用の住宅」のことです。
それに対し、「遊休不動産」とは、店舗やビル、工場、倉庫、土地など、住居以外の不動産のことを指します。
また、住宅が建っていない、農地や駐車場などにも使われていない土地のことを「遊休地」といいます。
つまり、
・使われていない住居用以外の不動産(遊休地を含む)=遊休不動産
ということになります。
特に企業や事業者にとっては、企業活動にほとんど関与していない「遊休不動産」は、資産を遊ばせているだけの状態であり、非常に勿体ない状態だといえるでしょう。
増加する空き家
総務省の調査「平成 30 年住宅・土地統計調査」によると、
『2018年における全国の空き家は 848 万9千戸と、2013年から 0.1 ポイント上昇し、過去最高と3.6%の増加、空き家率は 13.6%と過去最高』
となっています。
ただし、この調査はあくまで「住居用の住宅」を対象にした集計であり、空きビル、空き店舗、空き倉庫、廃工場、空き地などの「遊休不動産」は含まれていません。
▼総務省 平成 30 年住宅・土地統計調査
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdf
また、中小企業庁委託事業として実施された、令和3年度「商店街実態調査」では、以下のような数値が公表されています。
『商店街の空き店舗(*)数の平均店舗数は5.49店、空き店舗率(*)は13.59%となり、前回調査より0.18ポイント減少。
空き店舗率ごとの商店街数の分布をみると、空き店舗率が10%以上の商店街は全体の43.3%となり、前回調査(41.3%)より2.0ポイント増加。最近3年間の1商店街あたりの空き店舗数の変化をみると、「増えた」(33.3%)と回答した商店街が、「減った」(11.2%)と回答した商店街を22.1ポイント上回っている。』
上記の調査において、空き店舗が埋まらない理由も記載されています。
空き店舗が埋まらない理由〔A.地主や家主等貸し手側の都合によるもの〕については、
「所有者に貸す意思がない(34.8%)」、
「家賃の折り合いがつかない(29.2%)」
の順に多いそうです。
空き店舗が埋まらない理由〔B.テナント等借り手側の都合によるもの〕については、
「商店街に活気・魅力がない(29.7%)」
「店舗の老朽化(29.5%)」
の順に多くなっています。
なお、空き店舗の今後の見通しは、「増加する」と回答した商店街が全体の49.9%を占めているという結果に。およそ半数の商店街において、空き店舗が将来的に増加すると考えているということになります。
▼令和3年度「商店街実態調査」
https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2022/download/220408shoutengai01.pdf
つまり、空き家と同様、空き店舗も増加しているということです。空き店舗を含む「遊休不動産」の総数や割合についての統計がないため、具体的な数値についてははっきりとはわからないものの、増加の傾向にあることが推測できるでしょう。
空き家や「遊休不動産」がなぜ問題になっているの?
では、空き家や「遊休不動産」が増えることで、どのような影響があるのでしょうか。
以下のような問題が考えられます。
②火事や土砂災害のリスク
③街の活気がなくなる
④犯罪の温床となるリスク
⑤マイナスの資産となるリスク
それでは、空き家や「遊休不動産」が抱える問題について、より詳しくみていきましょう。
①街の景観が悪くなる
1つめの問題としては、「街の景観が悪くなる」ことが挙げられます。
長年放置された家屋や「遊休不動産」は、老朽化が進んで見た目が悪くなるだけでなく、倒壊や破損の危険性も高くなります。
庭がある住宅の場合には雑草が生い茂り、手入れされない樹木の枝や葉が、境界を越えて隣家に侵入したり、掃除されない落葉や害虫が発生したりして、近隣への迷惑になることもあります。
また、野獣が住み着く、ゴミの不法投棄といった問題が生じる可能性も……。周囲の安全面への影響、ゴミによる悪臭や衛生面の悪化につながる懸念もあります。
②火事や土砂災害のリスク
放置された住宅や「遊休不動産」には、日ごろ管理や目が行き届かないため、タバコの吸い殻の投げ捨て、劣化した電子機器などにより、万一の火災が発生した場合にも迅速な対応ができません。近隣への火災の延焼などのリスクが高まります。
また、土地付きの住居や遊休地の場合、地盤や樹木の管理や手入れが行き届かず、土砂災害に繋がるリスクもあるでしょう。
③街の活気がなくなる
空き店舗が増えると、人や物の往来が減り、商店街全体の活気が低下することも考えられます。シャッターが閉じられた店舗が多いと、訪れた人はどうしても物寂しく廃れた印象を受けてしまいますし、商店街全体の活気がなくなる気がしますよね。
活気の低下が、さらに残った店舗の経営を圧迫することにもつながりかねません。「遊休不動産」の存在が新たな「遊休不動産」を生み、加速度的に衰退が進む……といった事態に陥る可能性もあるのです。
④犯罪の温床となるリスク
空き店舗や空きビルなどは人の目が行き届きにくいため、不審者が出入りしてもなかなか気づくことができません。
知らず知らずのうちに、犯罪に使われてしまっていた……というように、不審者や犯罪者の都合の良い居場所となることを防がねばなりません。
⑤マイナスの資産となるリスク
では、「遊休不動産」等が抱える資産としてのリスクや問題点とは何なのでしょうか。
保有しているだけで税金がかかる
忘れてはならないのが「不動産は保有しているだけで税金がかかる」ということです。
土地や建物を保有している場合、毎年、固定資産税や都市計画税が課税されます。
固定資産の評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)
固定資産の評価額(課税標準額)×0.3%(標準税率)
例えば、評価額1,000万円の土地を所有しているとすれば、固定資産税14万 + 都市計画税3万=合計17万円の税金を毎年支払う、ということになります。
問題があると判断された空き家は軽減措置の対象外に
毎年固定でかかる固定資産税や都市計画税ですが、実は軽減措置が用意されています。
住宅用地については、固定資産税・都市計画税ともに軽減措置が、建物については固定資産税のみ軽減措置が適用されます。
土地に住宅が建っている場合は、住宅1戸につき200㎡までの土地の固定資産税が1/6、都市計画税が1/3と、大幅に軽減されます。
つまり、1,000万円の土地に住宅が建っていれば、たとえそれが空き家であっても、本来17万円の税金が3.3万円で済むということです。
ただし、このような税法がある背景もあり、空き家のまま放置されている不動産が少なくないという実情を受けて、平成27年度の税制改革で「空き家対策特別措置法」が施行され、見直しが図られました。
同法では、下記のように規定しています。
「『特定空家等』とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」
具体的にいうと、空き家の中でも、倒壊などの危険性がある、著しく衛生上の問題がある、景観を損なうといった問題のある空き家を「特定空家等」に市町村長が指定し、指定された空き家については固定資産税と都市計画税の軽減措置の対象から外すことができる、という内容です。
つまり、これ以降、空き家を保有しているだけで、お金がかかるなどリスクを背負うということになります。
もちろん、犯罪の現場となる可能性が高まるなど、周囲の住民や地域の保安等を考えたとき、空き家や「遊休不動産」は決して望ましいものではありません。
空き家や「遊休不動産」を寝かせた状態で放置しておくのではなく、ぜひ上手に活用する方法を考えたいものです。
▼空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426AC1000000127
「遊休不動産」「空きスペース」を有効活用し、再価値化へ
先に述べたように、空き家や「遊休不動産」は、何にも使われず単にもったいない、というばかりでなく、税金がかかったり、地域との関係性にも影響を与えたりすることもあるのです。
それなら「『遊休不動産』をもっと有効活用したい!」と考える方も少なくないのではないでしょうか。
遊休地や空き家は
・駐車場
・コインパーキング
・太陽光発電の用地
・シェア農園
・賃貸
などの用途に使われるケースが多いようです。
他にどんな活用事例があるのか、見ていきたいと思います。
「遊休不動産」だけじゃない!「空きスペース」の価値を見直そう
その前に! 「遊休不動産」という枠には入らないものの、実は価値化できるかもしれない「空きスペース(遊休スペース)」も見直してみてもよいかもしれません。
「空きスペース」の例としては
・ビルやマンションの空室
・ビルの屋上、軒先
・空き地
・店舗の空きスペース
・自宅のガレージ
などがあります。
いわゆる‟ちょっとしたスペース”を有効活用することで、新たな価値が生まれるかもしれません。
今一度、活用できるかもしれないスペースに着目してみてください。
企業の「遊休不動産」や「空きスペース」の活用事例
空き家や「遊休不動産」が問題視される状況のなか、「遊休不動産」を再生させようと取り組む企業も出てきています。
事例を紹介していきますね。
・木造建築の味わいを生かした飲食兼ギャラリーに
どうしても築年数が経過した物件は不動産価値が低下してしまいますが、物件がもつ特性や長所を生かして再生することで、新たな価値を生み出そうという取り組みがあります。
マンションやオフィスビル、店舗ビルなどを丸々1棟リノベーションし、外観や内装を一新して、まったく新しい不動産として生まれ変わらせるのです。
こちらの事例では、東京都渋谷区神南にて、公営企業の所有する木造築古の「遊休不動産」を賃貸物件に不動産再生しています。
物件は、イベントプロデュース会社が1棟借りすることになり、飲食兼ギャラリーとしてリノベーション。もともとの木造の構造にかかる柱や梁を活かしつつ、耐震補強工事をおこない、木造建築の味わいを有効活用し空間づくりを実現しています。
・元病院を一棟丸々シェアオフィス化
こちらの事例では、もともと地上10階と地下1階のビルは病院を、一棟全部シェアオフィスにリノベーション。
内部には、共用ラウンジスペースや会議室が設置され、フロア貸しタイプのシェアオフィスとして生まれ変わりました。築年数が経過した不動産に新しい価値を与えることに成功しています。
・元社員寮を賃貸マンションに
こちらの事例では、稼働率が低下していた社員寮の建物を、賃貸マンションにリノベーション。
1階北向き、半地下で日当たりの良くなかった1部屋を、あえてキッチン付きのコモンスペースにすることで、在宅勤務時のワークスペースとしても活用できるように。付加価値のある賃貸物件として売り出しています。
・廃校がグランピング施設に変身!
こちらの事例は、千葉県木更津市の廃校を活用してオープンした、グランピング施設「エトワ木更津」です。
小学校時代に使われていた、机や椅子をあえて使用するなど、どこか懐かしいユニークな空間で、非日常の宿泊体験ができます。
東京から1~2時間くらいの距離圏で、ショートステイをしながら地域の魅力を感じてもらうというコンセプトのもと、「遊休不動産」に新しい価値を与え、再生させる取り組みのひとつといえるでしょう。
・リアルに集う場所を創出する「HUBHUBプロジェクト」
三井不動産株式会社および三井不動産グループの株式会社ShareTomorrowでは、移動式ユニットを活用した「HUBHUBプロジェクト」を運用中です。
「HUBHUB」は「遊べる宿泊施設」をコンセプトに、宿泊ユニットのほか、パーティールームユニット、プールユニットの3種類の移動式ユニットを組み合わせた移動型宿泊施設。
宿泊するだけでなく、サウナやプール、BBQが楽しめます。また、バーやアートギャラリー空間として活用する事例もあるようです。
同プロジェクトでは、
・遊休不動産の活用策としても見込め、周辺エリアの街の魅力づけにも寄与。
・BBQ施設など自宅では確保しづらいが潜在的なニーズの高いコンテンツを生活圏内に設置。日常の生活に豊かさを提供。
といったことを目指しているそうです。
都市部に多い狭小地や、使用期間が短期間に限られる土地など活用が難しい不動産が「遊休不動産化」することも少なくありません。
利便性の高い「遊休不動産」を活用するべく、「HUBHUB」プロジェクトのような施策が進められているようです。
▼HUBHUB
https://hubhub.jp/
▼HUBHUBニュースリリース
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2021/1118/
「空きスペース」をワークプレイスとして活用!
このように、企業や事業者にとって‟埋もれた資産”ともいえる「遊休不動産」や「空きスペース」。
これをうまく活用できれば、新たな利益を生む資産に生まれ変わらせることもできるでしょう。
その1つの方法として、「空きスペース」をワークプレイスとして活用することが考えられます。
昨今の働き方の多様化、コロナ禍を経て、シェアオフィスやカフェ、ワークスペースなど、オフィス外で仕事をするシーンも珍しくなくなりました。
自宅やオフィス、あるいは出先などで「ちょっと集中して仕事をしたい」、そんなときに便利なのが、ワークプレイスの検索・予約ができるプラットフォーム「Suup」のようなサービスです。
ISVでは2023年11月30日より、新たな事業として「Suup」の運用を始めています。
「Suup」は、アプリやWebから、ワークプレイスの予約・検索ができるサービス。現在、1都3県を中心に、全国150ヶ所の電源WiFi完備コワーキングスペースを利用可能です。
【「Suup」導入事例】
「Suup」の導入事例を1つ、紹介しましょう。
東京都世田谷区の「明大前商店街振興組合」では、「Suup」を導入し、2022年4月よりワーキングスペースを本格的にスタートしました。
課題だった‟リピート率”を改善するため、月額会員機能を活用することで、利用者が順調に増加し、リピート率は20%→63%と大幅にアップ! 見事開業から5か月で黒字転換を達成しています。
完全無人経営のため、人員を割くことなく、商店街の新たな収益源を生み出すことができるようになりました。
「Suup」では、随時ワークプレイスの掲載申し込みを受け付けております。
お気軽にお問合せください!
▼「Suup」Webサイト
https://lp.suup.me/fc-lp